『若者の感性とリスク―ベネフィットからリスクを考える』書評


●日本教育新聞 2004.02.06 若者の感性とリスク―ベネフィットからリスクを考える

 科学技術の発達やサービス産業の隆盛,社会制度の成熟化などに伴って,社会生活そのものは格段に便利になった一方,現実の事件・事故などから,日常生活に潜む思わぬ危険性(リスク)に気付かされる。本書は危険性と便益性(ベネフィット)について論じたものだ。「他者にリスクを押し付け,便益のみを享受する,パラサイト的ライフスタイルを改めるべき時期に来ている」との問題意識が背景にはある。リスク専門家と大学生が「危険だ」と感じる順位には大きな違いがある。大学生は上位から原子力,拳銃,たばこ,殺虫剤,自動車だが,リスク専門家の場合,自動車,たばこ,アルコール飲料,拳銃,外科手術の順。それは専門家が被害の大きさやリスク生起確率などから認知し判断するのに比べ,一般人は経験や感情で判断するため。
 今後,リスクとどう向き合うかを考えるとき,「リスクコミュニケーション」の重要性を指摘。それは「特定のリスク事物に関して,個人,集団,組織の間で双方向的情報交換を行う過程」と定義されるもので,被害発生後による事後処理型リスクコミュニケーションではなく,予想被害に対応したリスク認知型リスクコミュニケーションを求める。初等教育段階でのローン返済事例などを含めたリスク管理教育の実施を提案することも,その一つ。社会生活を送るために必要な基本的心得を指摘している。(徳)