『高齢者虐待―専門職が出会った虐待・放任』書評


●毎日新聞社 2002.11.13 東京朝刊 家庭

 お年寄りの虐待は家庭内暴力として受け止められ,国や自治体の取り組みは不十分のままだ。その実態を紹介したのが本書。研究会のメンバーは主に関西の医師,研究者らである。
 高齢者虐待の定義そのものがあいまいで,発見も難しい。研究会が作ったチェックリストが載っているが,しかりつける・ののしるといった言語的虐待,無視などの心理的虐待,うっかりして介護を忘れる無意図的放任の順で多いという。予防には住民のネットワーク,ガイドラインに基づく行政的対応,それに法整備の必要性を提案している。(北大路書房・本体2300円)


●生活教育 2003年3月号 高齢者虐待◆専門職が出会った虐待・放任

“する側”も“される側”も共に不幸に陥れる高齢者虐待をどう防ぐか!?

 京都と滋賀の保健・医療・福祉の関係者でつくる「寝たきり予防研究会」は,1990年頃から,訪問先などで高齢者虐待と見られるケースに遭遇する機会が増えていることを問題視し,実態調査や事例検討を重ねてきた。並行して介護従事者や一般市民向けに,調査結果や検討事例を踏まえたシンポジウムを開催するなどして,虐待防止の啓蒙に取り組んできた。本書はその集大成である。
 虐待は多くの要因が複雑に絡み合って発生するものである。そのため,何をもって虐待ととらえるかは意見の分かれるところだ。本書では,「高齢者の人権を侵害する行為のすべて」を高齢者虐待と定義。家族関係がこじれたなかでの身体的・精神的・金銭的虐待のすべてについて,具体例をあげてその防止策を掲示している。
 また,早期発見のために独自に開発したチェックリストを紹介するとともに,虐待から解放された後の当事者の人権擁護についても,成年後見制度を通して詳述している。きわめて実践的な一書である。