『21世紀の社会心理学9 化粧行動の社会心理学』書評


●社会心理学研究 2002.第17巻第3号,189-190 21世紀の社会心理学9 化粧行動の社会心理学

書評より抜粋
 本書は,高木修監修による「シリーズ:21世紀の社会心理学」という全10巻中の第9巻である。
 これまで獲得してきた社会心理学研究の知見や諸理論を「化粧行動」に照らし合わせてみると,驚くほど適用可能,もしくは「化粧」の持つ意味を考えるガイドラインになる諸理論が多いことに気付かされる。おそらく編者による「自己概念,対人関係,対人コミュニケーション,文化などを考えることができる」という記述も,このことを端的に表現しているものでもあろう。ということは,これまで得てきた社会心理学の研究知見・理論を利用して,現実社会に暮らす人々の,より質の高い幸せな生活を実現するための大いなるヒントを与えてくれる21世紀の社会心理学研究が,「化粧」というテーマからも発展していく可能性は大いにあるだろうし,本書がまたそれを促進させる大いなる力を持っている内容となっていると考えることはさほど無理があることではないだろう。
 本書は,化粧することの社会性,化粧行動の文化的背景,対人関係を促進するための魅力づくり,そして適応をうながす,健康のための行動の観点から編集され,この領域の最先端の研究成果が紹介されている。また,本書は『化粧行動の社会心理学』とあるように,紛れもなく社会心理学書である。しかし,社会心理学書である本書が持つユニークな特徴として,執筆者が社会心理学者に限られてはいない点を挙げることができる。知覚・生理的な視点,心理臨床的な視点,文化的な視点を含み,執筆者紹介にある専門分野も,対人社会心理学,知覚心理学,進化生物学,数理生物学,化粧文化,顔文化国際比較研究,美容科学,化粧品学,顔の認知,化粧心理学,自己意識,羞恥心,グループ・ダイナミックス,感情心理学,実験社会心理学,老年期発達心理学,ストレスなどときわめて多岐に及ぶ。
 いずれの章も,化粧に関わる最先端の研究やデータを紹介しているものの,その記述はとてもわかりやすく,一般の人々が読んでも十分に理解できる内容となっている。先述したように,きわめて学際的な執筆陣から構成されている本書であるが,社会心理学徒である評者にもすべて読みやすく,工夫が感じられる内容となっている。(廣岡秀一)