『事例でみる発達と臨床』書評


●地方公務員のための学習誌EX 2001年7月13号 BOOKS

 一般の心理学の研究では,多くのデータの代表値として平均値が取り上げられることが多い。しかし,各種の相談活動やカウンセリングなどの実践活動では,多くのデータの平均値はあまり役に立たない。一人ひとりの具体的な姿を明らかにすることが大切なのである。その方法のひとつが事例研究法である。事例にはその事例にしかない特殊性があると同時に,その心理の背後にある一般性が極端な形で表現されていると考えることができる。
 本書はエリクソンの心理・社会的危機理論をバックボーンとしている。心理・社会的危機とは,人の生涯発達において,社会的環境に適応しようとする心理的努力の中で生じるストレスや緊張を意味し,人はこれを克服しながら発達し続けるというものである。
 この理論に基づき,現場のカウンセラーが人生の各時期に起きる様々な発達の障害の問題を,事例を通して読み解こうと試みたのが本書である。父親の暴力におびえ母親から離れられない子,キレる寸前の小学生,友だちがつくれない中学生,過食と嘔吐を繰り返す女子大生,フリーターを続ける成人,テクノストレスと伴侶の死によるうつ病,痴呆高齢者の問題と介護など,それぞれの事例は現代社会の象徴といえるだろう。事例研究法を理解すると同時に現代日本人の心理の一端を知ることができる。

●月刊地方自職員研修6月号 「Books」

 データに依存した現代心理学の限界から,本書はより個別ケースに踏み込んだ事例研究法をとる。一生涯を九の段階に分けて多くの事例を解説しており,教育・保育の職員だけではなく,部下を預かる,上司とつき合うフツーの職員にも有効。

●月刊悠2001年6月号 「新刊紹介」

 一般の心理学の研究では,多くのデータの代表値として平均値が取り上げられることが多い。しかし,各種の相談活動やカウンセリングなどの実践活動では,多くのデータの平均値はあまり役に立たない。一人ひとりの具体的な姿を明らかにすることが大切なのである。その方法のひとつが事例研究法である。 本書は,現場のカウンセラーが人生の各時期に起きる様々な発達の障害(不登校・引きこもり・職場不適応・摂食障害・痴呆など)の問題を,事例を通して読み解こうと試みたものである。それぞれの事例は現代社会の象徴といえるだろう。事例研究法を理解すると同時に,現代日本人の心理の一端を知ることができる。小中学生に関する事例も多く,教育関係者に大いに参考になる。