『7つの能力で生きる力を育む―子どもの多様性の発見』書評


●教職研修 2000年12月号 七つの能力で生きる力を育む―子どもの多様性の発見

多面的な能力のとらえ方に基づく教育の推進を

 教育課程審議会では,平成一二年一〇月六日付けで,「中間まとめ」を発表した。それによると,「これからの評価の基本的な考え方」として,学力については,知識の量のみでとらえるのではなく,「生きる力」がはぐくまれているかどうかによってとらえる必要があること,絶対評価をいっそう重視すること,児童・生徒一人ひとりのよい点や可能性,進歩の状態などを評価することなどの提言が行われている。
 こうしたことからも分かるように,子どもの能力をどのような観点からとらえ,どのように評価するかという問題は,わが国における教育改革の方向や中身を決める重要な課題となっている。
 本書は,『七つの能力で生きる力を育む−−子どもの多様性の発見』という書名が示すように,もっぱら知識の量としてとらえられる学力(アカデミックIQ)という一つの物差しだけで子どもを評価している学校教育の現状を見直し,多様な観点から子どもの能力をとらえ,一人ひとりの子どものよい点や可能性を伸ばす教育の実現を図ることの必要性と可能性を明らかにしたものであり,わが国における教育評価や教育改善のあり方について示唆するところの多い,時宜を得た好訳書として,広く教育関係者の一読をお勧めしたい。
 本書は四つの章からなっている。
 第一章では,人間には少なくとも七つの異なる能力があるにもかかわらず,学力という一つの観点だけからしか子どもを評価しない「単一能力教育」により多くの“落後者”をつくり出しているアメリカの学校教育の現状と問題点が取りあげられている。それはまた,わが国の学校教育をめぐる問題状況でもある。
 第二章では,学力・創造性・巧緻性・共感性・判断力・モチベーション・パーソナリティという七つの要素的な能力からなる「セブンアビリティ・プラン」について,創造性IQテスト・巧緻性IQテスト・共感性IQテストというようにそれぞれのテスト問題が示され,その実施手順・テスト結果・成果等について述べられている。本書の中心部分である。
 第三章では,多様な能力評価・テストを生かした職業選択の指導について,具体的な実践例を紹介しながら明らかにされている。
 第四章では,教育方法の改善や早期教育への示唆について,明らかにされている。“子ども教師プラン”すなわち,同学年生徒による相互教育やわが国の鈴木メソッドが取りあげられており,興味深い。
 本書の末尾には,監訳者による「子どもの多様な能力の育み方」と題する一文が付されており,本書の理解を助けている。また,本文中には,随所に翻訳者の寄稿によるコラムが設けられており,解説的な役割を果たしている。訳文もよくこなれていて,分かりやすい。
 子どもの能力を多様な観点からとらえ,評価し,指導に生かすことによって,子どもたちを「単一評価教育」の縛りから解放し,一人ひとりに自信と希望をもたせ,確かな自己概念を形成させることのできる教育,その考え方と処方箋を示した本書は,わが国における教育改革の方向をいわば先取りし,先見の明をもって行おうとする教育改革の書でもある。(山口 満)