『21世紀の学校をひらく トピック別総合学習』書評


●日本教育新聞 1999年11月19日 話題のほん

 日独の研究者と実践者の交流が結実した共同著作。カイザー氏は「レーザ」(地域における環境保護を意識した事実教授の教材収集)という学習ワークショップで教材開を発しながら近隣の学校で試している研究者。原田氏らがワークショップを訪ねたのが交流のきっかけだった。
 本書の16のテーマはカイザー氏の著書「事実教授学入門」から選んだもの。「児童虐待防止」や「ジェンダー」「自己と他者」など日本ではあまり取り上げられないテーマや,事象やトピックから広がりをもつ水や石など身近な素材や教材を活用するものを選んだ。
 翻訳書にならぬよう生活科や総合学習に関心をもつ日本の教師たちの解説がついている。

●総合的な学習の実践事例と解説 2000年■月 関連図書解題

[本書の特色]
 本書は,日本とドイツ双方の研究者と実践者との交流によってまとめられた共同著作として編集されたものである。原著者であり,編者は,ドイツのオルデンブルク大学のアストリート・カイザー教授である。本書の原題は,ドイツ語で,「Praxisbuch handelnder Sachunterricht」である。
 「編者まえがき」によると,「日本における生活科や総合学習の新展開を見こして」各章の解説が生活科や総合学習に深い関心をもつ日本の先生方によって執筆されている。原著と総合的な学習との接点が解説されている。
 訳本というと,一般的に難しいとか読みづらいという印象があるが,本書は小見出しが工夫され,箇条書きで示されていたり,写真などがあったりして,大変読みやすい。
[内容構成]
 本書には,16の学習テーマが紹介されている。ここには,日本ではあまり取り上げられていない児童虐待の防止やジェンダー,自己理解や他者理解を促すテーマ,身近な素材や事象などから広がっていく教材などが紹介されている。「自己と他者」「女の子と男の子」「性的虐待の防止」「光のあるところ影もある」「森林の愉しみ」「色遊び」「石:石の硬さと美しさ」「石器時代の生活」「ミミズの飼育」「ペット」「空気以外は何もない?」「廃材でつくる楽器」「学校でとる朝食からでるゴミの量の変化」など,様々である。なかには,本書を実際に手にしなければ内容がつかめないようなテーマも多い。
 巻末には,「日本における生活科と総合学習の今後の展望を語る」と題する座談会の模様が紹介されている。
[活用のポイント]
 本書は,これまでの総合的な学習に関する図書には見られない内容で構成されている。各学校で総合的な学習を構想するにあたって,本書から新たな視点からヒントを得ることができるに違いない。

●聖教新聞 2000年1月6日 書評

ドイツの16実践例を紹介
「知の生活化」に具体的方法を提示
 今日,不登校の児童・生徒は10万人を超え,小学校においては「学級崩壊」の問題も指摘されています。また,小学生の中にも「学校が嫌い」「勉強が嫌い」という子どもたちが増えてきています。
 このように教育が危機的状況に陥るなか,文部省は,子どもたちが学習へ主体的な取り組みをできるようにと,現在行われている「生活科」に加えて,本年から「総合的な学習の時間」を積極的に先行実施することを決めました。
 本書には,実際にドイツの小学校で行われている「総合学習」の実践例が,16の学習テーマ別に紹介されています。その中には,廃材を利用した教材(リサイクル教材)を授業で用いるなど,環境問題への関心の高いドイツならではの教材開発が随所に見られます。
 まさに「総合学習」という名称にふさわしい内容が数多く含まれています。また,日本ではなかなか取り上げられない「児童虐待」の防止や,ジェンダー,さらには自己・他者理解を促すトピックやテーマも詳しく紹介されています。
 さらに各テーマごとに,生活科や総合学習にかかわる日本の先生方が,日本の授業実践との比較並びにその応用の仕方について,詳しい解説を加えています。
 本書にある,「石」「空気」「雑草」といった,身近にある教育素材の意外な使い方や,ユニークな授業展開には,目からうろこが落ちる思いがします。こんな授業を受ける子どもたちの驚く顔や喜びの声まで思い浮かんでくるようです。
 子どもたちの知的好奇心を刺激し,知恵をはぐくむ教育は,家庭においても重要です。その意味で,本書は,学校の教師だけでなく,親にとっても子どもへのかかわり方を学ぶ一助となるでしょう。
 「総合学習」の実施を前に,生活に根差した活動・体験による,子どもたちの「知の総合化」「知の生活化」に向けて,具体的な方法を記した本書は,教育に携わる方には,価値ある一書となるでしょう。