『いま,子ども社会に何がおこっているか』書評


●女性教養1999年12月「ざ・ぶっく」

 社会の急激な変化の中で,子どもをめぐる状況にも,多くの課題が表面化している。本書は「学校」「遊び」といった子どものフィールド,「ジェンダー」「少子化」といった子どもを取り巻くフィールドの2つを柱に多面的に考察している。教育社会学の研究者によってまとめられたものだが,キーワードの解説,各章の終わりにはコラムが掲載され,学習書としても親しみやすい一冊となっている。

●児童心理1999年11月 「本の紹介」

 日本社会は,この半世紀,確かにすさまじい速さで変化を遂げてきた。子どもの心や身体がその影響を受けないはずはない。では,変わりつつあるものは何か。変わらないものとして何が残っているか。子どもをめぐる社会や文化という「外のあらわれた姿」を手がかりに,その実態と本質を丹念に解き明かす。一九九四年に発足した「日本子ども社会学会」,その五年間の研究成果の賜物。第一級の著者陣による最新の知見がまとめられている。広く実践的なかかわりを目指し,子どもと正面から向き合う姿が伝わる好著。

●日本教育新聞 1999年8月6・13日 メディア weekly読書

現象面から問題解決の方途探る
 いじめ,不登校,暴力,殺傷事件,薬物乱用,援助交際―これまでのモノサシでは計りきれない子どもたちの行動に大人たちは戸惑いを隠せない。ささいなことで「キレる」子どもたちを目の当たりにすれば,街中で注意するのもはばかられる感じさえある。
 戦後,日本社会は工業化,情報化,高学歴化,少子・高齢化と急速な変化を遂げてきた。大人でさえその変化に追いつけず,追従するだけで精いっぱいなのだから,成長過程にある子どもの心身に影響がないはずはない。
 本書は,今,子どもたちに起きている問題を心理的側面から解き明かすのではなく,子どもをめぐる社会(人間関係)や文化(生き方や考え方)という「外にあらわれた姿」を手がかりに実態を示し,問題解明の方途を探ろうとするものだ。
 「子どもの本質」「幼児期」「仲間集団」「学校」「遊び」「いじめ」など「子どものフィールド」を扱った章では「子どもたちの何が変わらないものとして残ったか」,「ジェンダー」「少子化」「児童文化」「マスメディア」「異文化」「入試」など「子どもをめぐるフィールド」を扱った章では「変わりつつあるもの」の実態を提示した。
 例えば,「9章 マスメディアにおぼれる子どもたち」は,内容の有害性をめぐる論点とその問題点を指摘する。有害コミックの規制推進派の多くが描くのは「擁護されるべき無垢な子ども」像だ。これに「表現の自由」「子どもの権利条約」などをめぐる対立が絡むわけだが,子どもたちからは性教育の必要性や情報を選ぶ目を育てること,さらに男性の視点で描かれているというジェンダーの視点,と冷静な指摘が挙がっているのである。
 このことから「今日必要なのは『規制』といった視点を超えてマンガがはらむイデオロギーを明らかにすることではなかろうか」と解決の糸口を示唆する。
 日本子ども社会学会は94年に発足。学際的な子ども研究を進める一方,ワークショップなど実践的なかかわりも重視する。
 調査や参考関連図書など豊富なデータを満載。注目されるキー概念のワンポイント解説も役に立つ。