『ヒトらしさとは何か』書評


●学習評価研究No.33 1998年3月号

 21世紀が眼前に迫ってきている。その世紀末を控えて,マスコミを賑わせる切実な教育問題が増えてきているように思うのは気のせいだろうか。この先,21世紀の教育はどうなっていくのだろうか。少なくとも,次世代の教育を見据えた長期的ヴィジョンの中で,今の教育を考え直す時期が来ていると言えるのではないだろうか。
 その21世紀の特徴を表すキーワードの一つとなるであろう,ヴァーチャルリアリティ。「仮想現実」と訳されるが,ヴァーチャル virtualは「事実上の,実質的な」という意味で,「現実そのものの仮想」と言った方がいいのかもれない。その「仮想」を「現実そのもの」と見るのはヒトであり,そう見させるような現実そのものの仮想物を捻出していくのが,ヴァーチャルリアリティの技術である。そこに,「心理学はヴァーチャルリアリティにとっての物理学」たるゆえんがある。
 ヴァーチャルリアリティ技術は,これから21世紀に向けて急速に発展していくであろう。それに伴って,現実と仮想の間,言い換えれば,ヒトとモノの間は,ますますボーダレスになっていく。そんな「ヴァーチャルリアリティ時代」の中で,我々はどう生きていけばいいのか。少なくとも,ヒトがヒトらしく生きることの重みが今よりももっともっと強調されていくだろう。