『高齢時代の地域福祉プラン』書評


●中國新聞 1995年10月31日 ふぁみりー

老人保健福祉計画に提言
“現場発”の出版相次ぐ―広島・岡山の研究グループなど
ニーズ把握訴え「高齢者時代の―」
行政の悩み盛る「都市で高齢―」

 昨年から全国の市町村で本格的に実施された老人保健福祉計画について,中国地方の保健福祉関係者が,現場から問題点を見直す2冊の本を相次いで出版した。
 1冊は,広島市の自主研究グループ「福祉を守る市民会議」(代表幹事・鈴木勉広島女子大教授)による「高齢時代の地域福祉プラン―広島発・わたしたちがつくる老人保健福祉計画」(北大路書房,2250円)。施設で働く職員の声や事例を盛り込み,望まれるサービスと,計画とのギャップについて述べた。
[中間見直しに狙い]
 本書は3部構成。第1部では,広島県や広島市のサービス内容が不明確と指摘した。その理由として,事前調査が不十分で,ニーズの把握ができていないほか,高齢者を「活(い)かす」のではなく,ただ「生かす」視点で立案しているためだ,と批判している。
 第2部では,生活支援センター,ホームヘルパー,老人福祉・保健施設などについての県や市の基本的な考え方を紹介。現状と問題点を点検し,県や市町村が,8年度ごろに行う見直し作業の中で,盛り込んでほしい内容を提言にまとめた。
 例えば,老人保健施設の現状を@福山市周辺に集中するなど,地域的偏在が大きい。郡部では保健,医療施設の不足から,問題を一手に抱え込み,本来機能が果たせないA施設によるサービスの質の格差が広がっているB重度身体障害者や痴ほう性老人の入所期間が長期化し,受け入れ数を制限せざるをえなくなっている―と分析している。
[教材にして勉強会]
 人員配置や医療・リハビリなどのサービス基準の改善,本来の目的である家庭復帰を促すための在宅ケア関連サービスの充実,地価高騰で施設配備が進まない地域での,用地取得のための公的支援―などを提言した。第3部では,計画を通して住民自治の発展を図っている全国の事例を紹介した。
 鈴木教授は「計画は,生の声を十分把握していたのか」と疑問を投げ掛ける。市民会議では,今後,同書をテキストに勉強会を開くほか,本年度内に県などに配り,「中間見直しの参考にしてほしい」と話している。同会議は,福祉や保健,医療の従事者と利用者,研究者で構成。2年半前から勉強会を重ねていた。