『まばたきの心理学』書評


●秋田さきがけ 1991年3月18日 読書 新分野への取り組み

 目にごみが入ったときなどのほかはほとんど自覚することのない瞬きについて心理学的側面から多角的に取り組んだ書である。瞬きがこのように多面的な意味をもち,内的要因によって動かされるとは,学問の対象がどこにでもあるものだ,ということを改めて思い知らされる。
 認知心理学,生理心理学,知覚心理学と研究領域を異にする3人の心理学者が,8年前学会で初めて出会い瞬きを別々の領域から研究していることをお互いに知る。
 翌年の学会で3人が期せずして同じような内容の発表を申し込んだため初めて生理部門に自発性まばたきというセッションが設けられたという実に新しい研究である。
 著・編者によると瞬きは随意性,反射性,自発性の3つに大別される。その役割は眼球の保護・湿潤,眼筋と網膜の休息,感度の更新,そして緊張の解消―の4つがあるとする。後者の2つが心理学者の興味をいたくそそることになる。
 とりわけ緊張の解消説はまだ推論でしかないが,心理学的立場から最も興味ある仮設だという。故に「感情とまばたき」「性格とまばたき」とそれぞれ1章を設けている。
 心理学の堅苦しさから解き放つために随所に「トピックス」のタイトルでコラムを設けて,くいつきやすさを演出する。
 例えば「ブッシュ対デュカキスのテレビ討論。まばたき率で大統領選を推測」とうたう。3年前の米大統領選でのテレビ討論でボストン大の心理学者が,両候補の各場面でのまばたき数を数える。その結果,ブッシュは1分間に67回,デュカキス75回。平常時のそれは15―20回なので驚くべき高頻度。まばたきが緊張と連動するとすれば,デュカキスの方がより緊張している証拠と分析。
 この書が研究の出発点。反論や確認のための材料と位置づけ,人間の心を瞬きを通してどれだけうかがい知ることができるか,これからが本番という。その意味で臨床心理士,カウンセラー,精神医,看護婦,教師ら現場の人々への広がりが待たれる。

●科学朝日 1991年4月号

 まばたきは,日常生活でも簡単に研究できる生理・行動指標でありながら,心理学ではあまり注目されていなかったという。本書では,まばたきを心理学の一行動単位として確立することを目指している。